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「ビール傘」カミングアウトコンビニ編

 立ち読みしていた漫画週刊誌からふと目をあげると外は夕立に白くかすんでいた。しまった。ここから自宅アパートまで徒歩5分、ただし不動産チラシによればだが。どうしよう? ポケットの財布には小銭しかない。ビニール傘くらいなら買える。だがその金額でビールなら2本、発泡酒なら3本買えるのだ。
①2本のビールをオモリにしてレジ袋の帽子が飛ばされないようにする。
②某CMのように「帰れば〇〇!」と叫びながらダッシュで帰宅する。
 その時店員さんの視線に気づいた。
「バカね、そんなことしたら炭酸がシュワシュワになっちゃうわよ」
そして私物らしい花柄の傘を差し出して
「貸してあげる」
レジの女性は黒木華似だ。
ええっ確か中学の同級生の、えーとなんだっけ名前が出てこない。だってあの頃はキミ男子だったよね? 
「ありがとう」
ぼくはビールを2本買って借りた傘をさして帰ることにした。今度飲みに行く? 実はボク、と言いかけると雨は上がっていた。

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