顔自動販売機 ②
卒業旅行で宿の裏山の細い小道を登り小さな鳥居を発見した。『顔稲荷大社』とある。
「なんか良いことがありそうだな。ほら顔をかけるにつながってるよ」
お調子者が面白くもないことを言う。おやこれは何だろう顔みくじ? コインを入れるとプリントされた感熱紙がレジシートのごとく吐きだされた。
十年後。たしかに当たっていたよと『顔が広い』『顔を立てる』『顔が売れる』を引いた奴らがその後仕事がうまくいっていると自慢し始めた。親の『顔に泥を塗った』者もいて顔を曇らせた。さらに自分が『顔がきく』を引いたおかげで山の神様のコネが使えてあの時無事下山できたと主張する者も。実は、私の引いたみさとしはまだ実現していないのだができれば一生封印したかった。
「リニューアルされてるじゃん。今度は『面みくじ』だってさ」
やめろ、またメン倒なことになるぞ。
なになに『カエルの面に水』?
密かに気にかけていた『顔から火が出る』は無事消火された。
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たらはかに様のお題に参加しています。