風の色 ①
風の色がうまく出せないんだと首を傾げてみるけれど本当はどんな色も形も表現できる自信はなかった。風景に向けてむやみにシャッターを切る。どうすればあいつのように描けるのだろうか、私の名で出品した本当の作者の筆使いを再現せねば。「あなたの撮る写真にはいつも同じ人物が写り込んでいますね」
風の色々な気まぐれのせいで描きあげた夏の宿題が飛ばされてしまったのはいつだったろう。隣で黙々と作業してもう終わったからコレあげると差し出された風景画が表彰されて一躍時の人となった私は風景写真を撮り続けた。例の相手は転校してしまったのだろう、って?生憎風邪が元で他界したよ母さんは。
無風で無色な空間に紛れこんでいた。そこにいたんだ。目を向け向けさせるキッカケをつくってくれたのにごめんね、母さんとは違う色の風になるつもりでいたけれど。
54+356=410
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