立方体の思い出 漂流編
無人島に漂着したのは若い男女6人だった。その中には何となくいいなと思っていたマリオというイタリア人の男の子もいた。
「こうなるともう誰と誰がパートナーとか無意味だよな。いっそアミダで決めるか?」
オタクっぽい男が日本語で言ったけどあたし以外は理解していなかった。
「あれトーテムポールかな」
島の真ん中に屹立するオブジェは確かに幾つもの顔を持ち腕を広げた柱だった。カトリック信者たちはそれを目にするなり十字を切り祈りを捧げ始めた。マリオもだ。祈りが通じたのか救助のヘリとボートはあっさり現れた。あたしたちはお祭り気分になった。
「これ立方体の展開図だな」
6人は6つの面から顔を出して記念撮影した。あたしは内向きに組み立てたときオタク氏と隣合うのも向き合うのも避けたかったが無理だった。
「愛とは見つめ合うことでなく一緒に同じ方角を見ること、だな」
やれやれ。
それがどうして帰国してからこうなったんだろう? 残り4面に4人の子らとは。
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