「棒アイドル」キッチン編
たまになら実家に帰るのも悪くない。面倒くさい両親も二人暮らしで退屈しているに違いない。
「あら、おかえり。今すぐにご飯の支度するからね」
言葉とは裏腹にオフクロはテレビの料理番組を見ながら踊っていた。
「何してるの?」
両手に麺棒を持ち振り回したり空中に飛ばしたりしている。そうかと思えばその隙に前転して落ちてきた麺棒を立て直した体勢でキャッチする。
「実は昔体操やってたの。鉄棒とか平行棒とか」
だがその直後麺棒で
「ヤァ!」
と作業台の上を打ちつけた。グチャだかグエだが音が飛び散る。
そ、それは俺が昔壁に貼っていたアイドルのポスター?
「知ってる? もとは棒棒鶏(バンバンジー)は棒で作っていたらしいわよ」
「ふーん」
なんとなく食欲がなくなり、あのポスターなんで毛布に加工されているんだと訝しんだがオヤジはどうしているのとも尋ねないでその場をあとにした。
背後から
「まったく、私に隠れてこんなものを!」
という怒声が響いた気がした。
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「なんだ、もう帰るのか。 あの棒AIドル面白いだろ? 母さんソックリで」
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