書庫記録凍結②bella,beauな毎週ショートショートnote

　街の本屋さんが店じまいした。子どもの頃はよく発売日にコミックを買いに走ったのに。雑誌を立ち読みすればオヤジさんがお約束の棚掃除を始めたものだ。本はネットで注文するし、読書よりゲームや配信動画を見て過ごす時間が増えたせいか時代の流れとはいえ。
　本屋の跡地で足が止まった。新しい店になっている。野菜中心ヘルシーソースパスタの店だと？　
「らっしゃい！」
この店員さんべらんめい口調だぞ気のせいか。
「ポモドーロたのむ」
「へい！赤本一丁！」
「合点承知のすけ！」
地下に降りて行く。B1もあるんだ。
「書庫ですよ。うち、本屋だったから」
ワインセラーかな。
「へいお待ち！」
「マックより早いね」
「地下の書架には赤本トマト・黒本イカスミ・青本バジリコ・黄表紙カルボナーラ冷凍パスタが並んでるんでさ。
で、旦那よくエッチな本写メしてやしたよね」
えっ？　肝が凍りつく。
オヤジさんそっくりな新店主が天井のカメラを指差していた。

410字

「バレたインかよ」

先代時代のデータが「万引き編」「迷惑行為編」「居座り編」「注文後放置常連名簿」などと背表紙を付されて棚に並んでいた。

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