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手加減無用鍋 ex

「何だってそんなものを? 返してきなよ。台所に収納スペースが無限にあっても要らないからね」寺子屋の蚤の市で息子が入手した鍋はテカテカと不敵な光沢を放っていた。源五郎鮒の紋に誰にともなくテカゲン鍋と呼ばれる。やがてテカゲンはキッチン内で不遇な立場に甘んじていた道具たちを体裁よくオークションサイトに掲載しては高値で売却し始めた。鍋といえば場所をふさぐものだが幅をきかせ新たなスペースを創設するとは大した奴だぜ。家族は喜んだ。で肝心の料理力のほうはどうなんでえ? それがさ、きいとくれよ、美味い味だと褒めればコンビニ惣菜の平行移動、きれいな焦げ目がついてると感心すれば子分のオーブンの仕業なのさ。とんでもねえ奴だな! でもアイツがいると楽しいんだ、置いてやっとくれよ父ちゃん。あたぼうよ! ところがそんな息子のところに万能調理鍋を持つ嫁が来るとテカゲンは無用の長物と迫害され下野を余儀なくされるのであった、その話はまた次回。

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 こちらに参加しています。たらはかに様、昨年はお世話になりました。年末にタイムセール千円引き!につられカニを購入しました。冷静になってよくみたらズワイガニでした。いまから積み立てて年末に備えます。


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