哀れなるものたち
えぐいとは蘞いと書いて①アクの強い味のこと②むごたらしくどぎついさま③思いやりがなくてきついさま、らしい。②の意味はエロくて且つグロいから来ているのだろうか。前評判も予習せずに見てきた映画「哀れなるものたち」。18禁とある。確かに子どもに見せたいかと問われればnoで、体調や同伴者に充分注意を要する内容などとハードルをあげてしまうと大したことなかった金返せと言われ、美しくてロマンティックなコメディと言えばよくもだましたなと苦情が来そうだ。また子どもは見たがるに違いないが。
以下ネタばれ、あるいは独自解釈あり。
これはヴィクトル・ユゴーの某ユマニスム小説の一部を現代化したものである。タイトルからしてもうね、などと言ってしまえば、ミュージカル好きを怒らせることになりそうだが。どこが現代かといえばフェミニズムの問題は避けて通られない。元の作品はあまりにもファンティーヌに救いがなく気の毒だし。ヒロインはパリで娼婦になる。脳はすでに失われているが。その上で鮮やかに返り咲くのだ。それこそが新時代の女にとってのハッピーエンドといえよう。(この仕掛けに気づく前は、内臓が駄目になった爺さんの脳を身体だけはまだマトモな元亭主に移植するのかな? などと予想していた)解説や原作にも当たらずに思いつきを記してしまったので、とっくに知っとるわ! でしたらお許しください。
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2月5日にこちらをアップしたのち、改めてレ・ミゼラブル映画(ミュージカル)版(2012)を再生した。敵役ジャベルはラスト近くでセーヌに入水する。そのシーンがヒロインの最初の場面に重なる。更に蛇足だが解説すればゴッドはジャン・バルジャンでマックスはマリウスだ。レ・ミゼラブルはフランス革命後の復古派と革命派の対立を背景に自由を求める男たちの物語で女は脇役に過ぎない。ファンティーヌは娼婦に身を落としそこから這い上がることなく落命する。
娼婦こそもっと光を当てられるべきだったのではないか。昨今のコロナ禍により最も打撃を受けたのは性産業だったのではないか?
架空のパリでベラはあり得なかった過去を再現する(3月17日追加)