心お弁当 少年探偵編
「先生、このお弁当どうでしょう。実に優美で繊細で頽廃的な美しさです」
助手はお弁当ミュージアムの展示物を一点ずつ眺めながらコメントする。
「だがコ林くん、この猫足のような複雑な曲線。隙間に汚れがこびりついたら容易に洗い流せない。今どき18世紀の宮廷じゃあるまいし」
『コヨイ ヒホウ ココロオベントウ チョウダイ シマス』
予告状が館長宛に届けられていた。
「あれなんかも狙われそうです。うちの姉貴も好きだし」助手が指差したお弁当は先ほどのに比べてシックでカジュアルだがお洒落の王道感を漂わせていた。
「確かに20世紀にしては実用性を目指していた。本国はともかく外国では金持ちしか買えないがね。わが国じゃ特定の芸能人やら特定の職業のイメージがこびりついている」
怪盗の邪心はいずこにこびりついているのだろうか。
そばで警備員に扮した犯人は焦っていた。変換ミスを避けるためにカナ書きにしたものの、ご飯粒で貼ったマッチ棒がズレていたのだ。
410文字
解答編
「お前の目当てはロココお弁当だなっ」
「いえ、すみません。ココ(シャネル)のお弁当を女房が欲しがるもんで」
マッチ棒で作成した「の」が「ロ」に変形していた。
たらはかに様のお題に参加しています。