「涙鉛筆」②
ある国に二人の王子様がおりした。ある日王様が二人に鉛筆をお与えになりました。はじめの王子さまは心の中で
「何でえ鉛筆かよ」
と思いましたが、
「嬉しいです。大切にします」
とピカピカに磨いて引き出しに入れて鍵をかけました。鉛筆は使ってもらえず悔し涙を流しました。もうひとりの王子様は
「これはすばらしい道具だ。どんな言葉も書けるぞ」
と鉛筆を削って削って書きまくりました。
とうとう短い短い王様じゃなくてちびた鉛筆となってしまい、王子様は悲しい涙を流しました。
書くことが大好きな王子様は国を治めるのが馬鹿らしくなり、とうとうあるジャンルで王様と呼ばれるまでになりました。はじめの王子様はもともとそのつもりでしたが、王様になりおバカさんでしたのででアッサリと戦争に負けてしまいました。
占領された引き出しから助け出されたのは魔法をかけられ鉛筆に姿に変えられていたお姫様でした。短く短くなった妹姫と抱き合って涙を流して喜びました。
409文字
残り物アレンジではなくこのお題のためのオリジナルです。写真は「黒井健絵本ハウス」の展示品です。
たらはかに様の企画に参加しています。
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