モンブラン失言 ④
「ここではモンブランでなくマロンシャンティーイなんですって」
昼下がりのプチトリアノンにて男装の近衛隊長と実は貴族のメイドを伴った王妃はパン食べ放題かどうかはともかく優雅にガトーでティータイムを楽しんでいた。
「世間の批判的な目を逃れる姿は、あたかも別学の園で異性の視線がないのをいいことに思いの儘に振る舞う女子高生のようですね」
「スェーデンの伯爵さまもルイ16世陛下だって本当は女性ではありませんかオホホ」
いなくなった侍女の後釜は開幕の時間を気にかけていた。
「当会館のアフタヌーンティーのセット販売の高額な料金の上抽選をくぐり抜けねば入手できないチケットですのに」
「お黙り。お前の代わりはいくらでもいるのよ、何人消えたところで表沙汰になったり騒ぎになる方がレアケースですからね」
「メダム、こちらをお試しあれ」
背の低いギャルソンが幾層にも重なったパイの隙間にカスタードクリームを挟んで苺を飾りたてた一品を手に一礼した。
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「何だ、ナポレオンパイじゃない。不可能はないですって? 悔しかったらモンブランを越えてみなさいよ」
のちにこの発言を彼女は後悔することになるのであったが。
たらはかに様のお題に参加しています。