始まりは
始まりはボクにも弟がいればいいのにという三男の一言だった。さすがに次はもう、ということで普通ならば難色を示されるはずの犬がすんなりとわが家の一員に収まった。始めのうちこそ立場は四男だったが、あっというまに老成して兄ちゃんオジサンじいちゃんと進化していた。何代かの石が並んだ。長男次男はさっさと出て行ったが三男は就職も結婚もせずに死んだ犬たちの墓守をし生きている犬たちの世話もしている。おたくは安心ですねと近所の人の揶揄い混じりの声には苦笑するしかない。畑仕事はぼちぼちこなしていたが流石に年を感じないわけでもなかった。いつのまにか石が増えている。こんなに犬を飼ってきたのか、みんな同じ顔だったな。そりゃそうですよ、四郎の実家はブリーダーさんで元は同じ親でしたからねと妻。父さんごめんよオレブリーダー家の入婿になるわ、畑もペット霊園にして。思いがけない言葉に唖然としてあらためて墓石の数々をみていて発見した『三郎之墓』。
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