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唐揚げ死なず ①

「唐揚げ死なず」の正式名称は「唐揚げ語呂し」なのだがゴロが良くないと叩かれ、要するに言葉狩りにあって「死なず」に落ち着いたのだ。
 学生のコンパが発祥だった。ある女子学生が唐揚げにレモン汁をかけて白い目で見られたとき、見た目が可愛い彼女に目をつけた男子学生がその唐揚げににタバスコを追加し、食べてみせ「うまい、唐揚げ死なず!」とやったのだ。それがきっかけで二人はゴールインしたという。進化して見合いの席でこの相手は無理と判断した一方が唐揚げ(でなくても良い)にとんでもない調味料をかけて「語呂す」作法ができた。相手がもっとすごい調味料を足して完食した場合「お断り」できないのが不文律だ。
 もう一つの逸話は、お近と見合いした松兵衛、トシマだが金は取れるかも、とふんだ。だがお近は唐揚げに何かをかけている。油だ。しまった。塩と酢を足してドレッシングにするか? そこに「待った」がかかった。「語呂し」でなく「頃し」ですからね。濁点が取れて気の抜けた二人は舞台女殺し油地獄オーディション失格となり「からあけしなす」と引き下がった。
 白ナスcolour消し茄子が言う。
「私ならどんな調味料とだってうまくやるけどね」言い返す唐揚げ
「居酒屋の人気メニューになってから言え」
流石は唐揚げ、死なず。

542字

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