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手加減無用鍋 ①

 真理子とアタシの間柄だもの、遠慮会釈なしで何でも言い合うことができると思われているかも知れないけれど、親しき仲にもなんとやらでなかなか口に出せないことだってあるわ。例えば年賀状よ。毎年真理子から来る年賀状はヤマシタマリコって旧姓のまんまなの。確かあの子の披露宴にはアタシだってそれなりに包んだはずよ? ご主人って婿養子さん? それとも離婚でもしたの? そんなこといくらアタシだってきけないじゃない? そもそも真理子のご主人というのは、アタシたちのあいだでも人気のあった田辺先輩で、壮絶なる決闘の末に二人は結ばれたのよ。でも式で彼女の隣に立っていたのは別の田辺さんだった。案内状を受け取ったときのアタシたちの驚愕の一瞬だけに賭けたのね。やるじゃん。そんなこんな積もる話をしましょうよ鍋でもつついて。
「なぜ旧姓なのかって? やだ。古いソフトのデータ使いまわしてたわ」まさか自分のほうが田鍋様と変換ミスで送り続けていたとは、


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