釜揚げ師走 ②
わが子の担任が大山由香里だとわかった瞬間はアチャーという感想しか浮かばなかった。知らない間柄ではなかったし言葉を交わしたこともある。大学の同窓生で、変人だと気づいたのはこんなひと言のせいだ。
「私は未来のことがわかる」
息子の受験校を決める三者面談では絶えず首を傾げ気味だった。
「A校は無理だと思います」断定的口調だ。確かに成績はギリギリで自宅からも遠いが息子は乗り気だったのに。
そこに合格したら、けろりと
「受かる気がしていました」と言い放った。発言を撤回するたびに低姿勢になっていたのではやってられないのか。在学中に彼女と交わした会話とは、
「免許取りたての12月だったのに走行中追突されて、所謂お釜を掘られるというやつね。以来私は未来がわかるようになったの」
確かにA校は授業料が高額だけれど、あいつはやる気になっているし、二人の収入を合わせれば、余裕でやっていけるだろう? それで首の調子はどうなんだ? なあ由香里。
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