決闘年越し蕎麦 ①
どうしてそんなに嬉しそうにしているのママ?
嬉しそうになんかしてないわ。
だってお蕎麦をゆでながら鼻歌なんか歌っているよ。
ああテレビでやってる歌合戦にあわせてしまったのね。
大晦日のたびに繰り返されたやりとり。
呑気に呟いている場合じゃなかった。夜勤明けでお湯を沸かし始める。同僚からのラインが鳴る。
今飲み屋にいるんだけど、奥のテーブルにあんたの旦那がきているよ。ウソじゃないって、ホラ(写真)
確かにそこに写っているのは今夜は仕事で泊まりがけになると言っていた彼と、見覚えのある若い女がベタベタと親しげにしている様子だ。あの女は確か?
わかった。今すぐそこに駆けつけるから! 悪いんだけど、年越し蕎麦をそのテーブルに頼んでおいてくれる? 間違ってもアタシが行くことは絶対に言わないでおいてね。
あの患者さんだ。アレルギー体質があったはず。本人は自覚してないけど。なぜか覚えていた。おばあちゃんと同じトシコという名前を。
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