「音声燻製」みちのく編
残念ながら音は長持ちしない。足が早い。すぐに変質して風味が変わってしまう。新鮮なうちに塩分糖分に漬け込もう。こうしておけば冬のあいだも音に困ることはなかった。
それはそうと健康診断の結果は無情であった。
「コレステロール値が上昇していますな。また肝機能障害の疑いがあります。食生活の改善をお勧めします。それに甘いものを摂りすぎていますね。」
そうした音声も空に虚しく消えていった。たしかに少しばかりしょっぱいかなうちのごはんは? 大根は元々辛い。そこにさらに味を足す。濃い。音声から火花が散った。桜の音声のチップがスモークを吐いてくすぶり続ける。この風味を足せば塩分濃度がもう少し薄くても旨みは残り心地良い音声が口の中に響きわたり続けるのだった。
音声ほどは速くないもののこまちに乗れば仙台も盛岡もひとっ飛びだなあと当地の名物いぶりがっこ(大根の燻製)を齧りながら音声ならぬ温泉に浸かり養生する夢を見るのであった。
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