「ぴえん充電」 あるいは午後のひととき
温めたウェッジウッドのポットにアッサムの茶葉をふた匙入れた。沸騰した薬缶から湯を注ぎティーコージーをかぶせている。今日はゴスロリか。メイドの足首が長いスカートの裾からちらりとのぞく。ティーブレイクの時間だ。ヴィクトリア朝の居間のソファに寝そべりカップの耳に指をかけて香りの良い紅茶をすする。ケーキスタンドのスコーンでクリームとブルーベリージャムを掬いとってつまむ。私の充電タイムだ。
他の者たちはあちこちに据えられた直方体にコインを入れてパネルから好みの缶を選ぶ。そこらじゅうで缶のゴトンと落ちる音が響くのも一興だ。
「所長そろそろお時間です」
「うむ」
私は立ち上がり終業までの作業にとりかかる。
『ピエンジューデンジカン、シューリョウデス』まだダメだなロボットの声は。なまじネイティブ風にしたせいか日本語なのにPMがピエンに聞こえる。充電時間に自販機から乾電池を取り出すまでには進歩したのだが。改良あるのみ。
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「じいちゃん、イキイキしてるね」
「そうね、生きがいか見つかってよかった。おばあちゃんに先立たれて ぴえんと言ってたのが嘘のようだわ」