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「動かないボーナス」⑥ よ永遠に

「ばあさんや、今まで貯めたボーナスでそろそろ買おうと思う。ワシは次男で故郷の先祖のとこはもう一杯だ。いや不便だ。兄嫁は甥っ子と相談して郊外に移したらしい。海に撒くとか色々なプランを検討したが結局これにしようと思ったんだよ」
夫が新聞折込みチラシのパンフレットを広げる。何よこれ。遠いのは不便って言っておいて。私はここを動きたくない。あなたのボーナスから積立てたヘソクリを隠した床下のこともあるし。たった一人の娘のことも心配だわ。適齢期をとっくに過ぎたのに独身だ。『ボーナスラブ』とやらにのめり込んでしまっている。時々荷物を届けてくれるイケメンの配達員さんに会えなくなるのも残念だ。そうだ、あの二人がくっついてこの家に住んで夫だけ「そこ」に行けばいいんだわ。我ながら名案。私は渡されたパンフレットをあらためてながめる。親近感のある文字が目に飛び込んできた。
「ヤ○ト島。移住者募集中。墓所付き。大人気カギ穴形まだあります」

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