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忘年怪異 ①

 もしも宝くじが当たったとしても、ホストやホステスに入れこむことはないだろう。職業差別と言われようとそこは譲れない。誰もそんな質問などしていないのに私は鼻息荒く心の裡で叫んだ。だいたいなんだコイツら、チャラチャラしやがって。男のくせに化粧なんかしてブランド物の鞄だと? 問題はゼニ金なのに当事者は色恋だと信じているのだ。
 大江戸山手線車内は都会風の華やかな若者たちで混み合っていた。
「イェーイ、ドンペリ開けマース!」
軽薄そうな男が車内でボトルを振りかざす。女たちが嬌声をあげる。車内はホストクラブの忘年会と化している。しまった。変な車両に乗っちまったのか。どおりで様子がおかしかったのだ。
「新入りさん?」厚化粧の年増が馴れ馴れしくにじり寄ってくる。こうなったら次の駅で降りるしかない。
「どいて。通して下さい降ります」
ああら冷たいのねえオニイサン、オニイサン、合唱が広がる。
「やめろ離してくれ」ふりほどくと、キャアッと女は人形のように崩れた。鬼だわこの人! ええっ何それヤダっ 違う違うやめろ! 若者たちが折り重なって倒れる。鬼ってなんだよ、ふざけんな! 
『まもなく終点大江山です』
シュテン、シュテン、オオエヤマ! 都会人のオミズたちはカトンボ並みに弱々しい。と怪人ノオ見ずた痴話はカトンボ、、怪人、怪人、

『大江戸山手線内で大量殺戮事件が発生しました』

572字

過去の文献を現代語に置き換えたものです。
御伽草子の酒呑童子との関係は不明ですが。。


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