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穴の中の君に贈る 昭和編

 海だ。砂だ。ボクはうれしくなってはしゃいだ。ママは注意ぶかくあたりを窺う。
「それは駄目よユウくん、お友だちのだから」小さな熊手とスコップは誰かの忘れものだ。
いいさ、ボクはお山を作るんだ。
だいぶ積み上げたときに知らない子がきて、てっぺんを平らにした。
「こうするともっと高い山にできるよ」
ボクの山なのに。
「穴を掘ろうよ、キミはそっちからね」
勝手に決めてずんずん掘ってる。
なんだよ?
「ボクはトシちゃんさ」
ちえっ気取ってやがら。
穴は途中で陥没した。積み方が柔らかすぎた、やり直しだ。ボクらは夢中になって何度もトンネル掘りを続けた。
「やったぞ!」
穴のなかからアイツの声がした。お山のまん中あたりで小さな指と指が触れあった。
世界の君と太陽のボクが。

319文字

 濃い顔ぶれの熱いビジネスドラマといえば池井戸潤先生でしょうか。その源流といえばプロジェクトX? それよりもっと前に三船プロと石原プロによる企業タイアップ映画「黒部の太陽」(1968 熊井啓監督)があったようです。それを下敷きにしたかったのですが😓
一時著作権関係でなかなか鑑賞が難しいと言われていましたが今では普通に動画配信されていますね。予告編だけでお腹いっぱい?

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