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「ジュリエット釣り」ハッキン編

『釣り糸を垂らしながら僕は考えた。釣りと狩猟は根本的に違っている。どちらもヒトが生き物を捕らえる点では同じであるが釣りの場合こちらが獲物を選んでいるわけではない。魚には食いつかない自由があるし、こちらの期待に沿わない獲物に食いつかれる可能性だってある。そういう意味で言えば、狩猟が完全に創造的な詩作や作画に似ているのに対し釣りはあたかも読書のようである。書き手の言葉に対して我々は受動的である。くり返すが何気なく手にとった書物のなかに思い通りの内容が記されているとは限らないのだ。』

「ほほう?」
ママがぼくの作文が書かれた原稿用紙を手に取っている。
「言い訳することないのよ」
冷や汗が流れた。
「それにしてもママも名前しか知らなかったわ、この本」
知らないよ知らないよ、図書室で針に餌をつけて投げ込んだらこれが引っかかってきただけなんだ、ボクのせいじゃないってば。

マルキ・ド・サド著
『ジュリエットの物語あるいは悪徳の栄え』

408文字

ジュリエットといえばシェイクスピアですが、小学校の図書室には無さそうな書名をネットの片隅で見つけまして。読んでないです。

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