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「違法の健康」新美オマージュ編

 村に古書店ができた。それまでは本といえばコンビニだった。農作業の合間の気さくな店主とのおしゃべりは楽しかった。天気の良い日は畑を耕し雨の日は古典に勤しむ。なんと健康的な生活だろうか。店主は山の方に住んでいて日中だけ店番にやって来た。
「ニイさん、新しい本が入ったぜ。3年前のベストセラーだ」
「へえ、『癌が治るキノコ健康法』か」
色々話題をふりまいたけど結局のところインチキということに落ち着いたあれだ。その日家に帰ると『癌が治るキノコ健康法』が自宅の土間にさりげなく置いてある。
「やっぱりお前だったのか。気にかけてくれてたんだな。あれは仕方がなかった。オフクロは寿命だったんだ。この本、店から盗ってきたんだな。偉そうなこと言えないが違法なことは駄目だよ」
 近所の悪ガキの仕業だ。死亡届を出していないから母がまだ闘病中だと思ったようだ。
 翌日古書店に本を返しに行くと、店舗は跡形もなく消え陋屋に木の葉が分厚く積もっていた。

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