前日譚
桃太郎と桃次郎と桃三郎の三名は桃の木の傍で手を取り合った。
われら同じ日に死ぬことを誓う!
桃太郎の胸に微かな躊躇いがよぎる。トリオの一角であることに不足はなかった。だかあとのメンバーは本当にこの二人なのか? 傍流といえ母は我家を漢王室の血筋と言っていたではないか。
桃次郎は忠犬の如く度重なるヘッドハンターからの誘いを断り偃月刀を振る。
桃三郎は大酒を食らったように赤ら顔だが猿生来の体質によるものだ。
さあ、とにかく鬼退治だ!
でも、何かが足りない。
赤子をくわえ天を舞う雉か?
三顧の礼で呼ばれるのを待つアイツか?
以下次号!
「お上、そちらをお気に召されましたか」
「朕は軍記物はあまり好まぬ。もっと雅な物語はないか?」
「すぐ手配いたしまする」
「ささ、今のうちに」
次から次へと届けられる物語に帝は気をとられている。左大臣は大急ぎで桃の種と果肉をくり抜くと別の物を詰めて川に浮かべた。
中宮さまの不義の子だ。
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