「チャリンチャリン太郎」進化編

　楽しみにしているアニメがあった。夕方に放送されていたのだがその時間帯は塾に行かなくてはならない。ママに録画を頼んでおくのだが帰宅しても塾の予習復習があり再生している余裕もない。我慢したご褒美よとママが小銭をチャリンとビンに落とす。そんなふうにしてやり残した遊びはどんどん貯まっていく。ボクの疲労と不満も蓄積されていく一方でチマチマと貯め込んだ小銭も増えていた。ついたあだ名はチャリンチャリン太郎だ。

　ある日のこと、帰宅するとママが倒れていた。ボクが真っ先にやったことは119番ではなく録画してあったアニメの再生だった。当日の分だけではストーリーがわからないので遡っての再生だ。アニメは何話も何話もあり、他のシリーズやシーズンもすべて寝ずに見た。そうこうするうち朝になり宅配便のベルが鳴る。ああうるさい。ボクは思わずビンを投げつけ壊す。小銭をつかんでばらまく。

　チャリンチャリン太郎は返上だ。ボクの名は寝ず見小僧ジロ吉。

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