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腋の薔薇時計 ②

「上半身と下半身は別々にしたほうがいいと思う。場所取りすぎるもの」
妹が勝手に話を進める。下を取るつもりなのね。ふだん意見が合わないけど珍しく同じところに目をつけていた。だったら一緒にどう? よくよく話をきくと案の定私は上、妹は下に目的があった。

 別行動で美術と建築の街から北に向かう。妹はどうしてるかな。土産物店でプリントTシャツをみる。確かに激しい動きをすれば腋に汗染みができてしまう。シャツだけさっと交換できれば楽に違いない。ヒゲの店主いわく
「腋の汗染みかね。これなんかオススメだよ」示されたTシャツは腋の部分に別の柄が入っている。これなら汗をかいても目立つことはなさそうだ。カスタネットを手に腕を高く伸ばしたマネキンを見ると腋に時計模様があるではないか。
「はあ時計? もう少しオシャレなのない? たとえば薔薇とかさ」
すると店主の顔がみるみる曇った。
「薔薇、ねえ」
仕方なく時計のシャツを買ったが溶けていた時計だけに。

410文字

妹はアンダルシアでフラメンコ、姉はカタルーニャで美術鑑賞の旅でした。(店主は『ローズ』ときいて少し不機嫌そうでしたね😓)

たらはかに様のお題に参加しています。

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