宝くじ魔法学校
大晦日の晩一人の男がぼんやりとテレビを見ている。
「それでは年末宝くじ当選番号の発表です」
男の顔に焦りの色が浮かんだ。
これは来るな。
「一等はxx組xxxxxx番です!」
するとその瞬間、部屋の郵便受けが羽ばたき始めた。カタカタカタ。ううっ、そうきたか。そして隙間からヒラヒラと紙片が部屋に侵入して来る。一枚、二枚、三枚。それらはどんどん増え始め、あっという間に小さな山になった。よく見ると宝くじである。それぞれのすべてに一等のxx組xxxxxx番と記載されている。
「やめてくれ。誘惑しないでくれ。オレだって真面目にやっているんだぞ」
男は頭を抱える。そしてくじを掴むとすべて引き裂いた。
メゾン魔法学校9.75室。ファンタジー好きの大家の趣味で作られた賃貸アパートだがその実態は仙人修行の我慢部屋であった。今回は魔法学校の瞬間模造の術実習教室の協力を得ていた。だが売れ残りの本物が混ざっていたのはここだけの秘密だ。
405文字
たらはかに様のお題に参加しています。
『本作品はamazon kindleで出版される410字の毎週ショートショート~一周年記念~ へ掲載される事についてたらはかにさんと合意済です』
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