「しゃべる画像」カタログ編
壁一面にたくさんのイラストが飾られている。どう見ても私よりも若くて美しい女の子の画像ばかり。まるでタレントのオーディションの選考書類から抜け出してきたようだ。そのなかの一番手前のおとなしそうな子と目が合った。あれにするか。
「そこの人」
私は腰掛けたまま額を指差す。画像は微笑む。
「初めましてマリコです。お話をしてもよろしいでしょうか」
「ええ」
二人の作業員が現れて素早く私にエプロンを着せかける。
「急に寒くなりましたね。お客さま来月はどこかにお出かけですか」
「たまにはドライブにでも行こうかなと」
「それは結構ですね。どうかお気をつけていってらっしゃいませ」
ハサミを動かしている間も会話は続き仕上がると鏡の中の私はマリコと寸分違わない姿になっていた。
ここはしゃべる美容院ならぬ美容クリニックだ。画像は巧みな会話で患者をリラックスさせ施術はAIが行う。もっとも一部であの会話が面倒くさいという声も出始めているらしいが。
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