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ときめきビザ ④ 期限切れ編

 早朝から大使館に赴いて発券機を押し順番待ちしてたのに渡航者向けでなく帰国者向けだったとは。

 せっかく並んだ列を追われ最後尾に飛ばされ絶望していると縮毛の担当者はランチメニューを決めかねてか気もそぞろオーラを発光フラッシュしつつ顔写真の不備を指摘する。最寄りのコンビニに急ぎアプリをダウンロードしどうにかデジタル化(店員さんも慣れたもので)

 焦って戻れば荷物を置いた場所取りの長椅子が後から来たやつに占領されている。私が座ってたんですけどなんて言う方もほうだが、どう見ても日本人のそれもバックパッカー崩れは一歩も引かない。

 言いなりは負け、死んでも空気は読まない勢いだ。現地で味わった苦汁を今に活かしてどうする、帰国待ちらしき浅黒いやつがジロジロ。凝視はやめろ、せめて傍観で。日本の流儀ならばね。彼も元日本人だし。

 みんなときめいていた。顔を紅潮させ動悸に息を弾ませて。陰性証明を取らないと。ネタは公開不可だった。

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たらはかに様のお題に参加しています。

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