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shinobuk
「砂利ベッド売り」再会編
その光景に思わず息を飲んだ。間違いなくあの人だ。日はすでに山の端に傾きあたりは薄暗かったが採石現場の作業員は一心に重機を動かし続けている。大型ショベルカーで砂利をすくい上げてダンプに積み込んでいるのは見覚えのある女性だった。
「小劇団で私とジュリエット役を争ったあなたがなぜここに」
作業を終えたらしいところで声をかけてみる。「なぜって言われても女手一つで子どもを養うのにこれが最適だったからよ」
きけば一時期は釣り目当ての観光客で賑わっていたが気候変動により何度も洪水を繰り返すうち人の足は遠のき人口も減った。村は外部の移住者を住居付きで呼び込んでいるという。
「それで貴女は何しにここへ?」
いったい何から話せばいいのかしら。舞台女優としての華々しい活躍? でもあの禍いで興行は中止になった。思い切って有り金はたいて田舎暮らしを始めようと目論んだけど、きてみれば、とんでもない砂利河床(ベッド)だったと?
「一緒にこれやる?」
410文字
「そんで誰かに売りつけりゃいいわこの砂利ベッドを」
たらはかに様の企画の裏お題に参加しています。