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生き写しバトル ①

「おじいさん、きょうシロを見かけたのです! 」
興奮して叫ぶ妻。
まさかそんなはずはない。あいつは三年前のあの日に旅立ったのだから。オレはちゃんと見届けた。だけどばあさんを悲しませたくなかったから行方不明になったと嘘をついたんだ。
「きっと誰かに保護されていたんだわ」
と期待にみちた声をふるわせる妻をよそにオレは近所をのぞいてみた。驚いたことにそこにはシロの生き写しがゴロゴロ。どうしたことだ? 主人はニヤリと笑い三年前におたくのシロ君の詳細なデータを元に大量生産したのですよ。今ごろは警察や軍隊で大活躍しています。何ということだ。あいつをそんな目的には使わせはしない。全て我が家で買い取るぞ。
「はあ? そんなに大量に養うのですか」
「構うものか!」
 御伽話で得た悪辣ジジイの汚名そのままにオレはバトルに参戦した。何としてもシロをもう一度手に入れてやる、たとえ毛一本だとしても。主人につかみかかり手にした毛! 奴の物とも知らず。

410文字

意外といい人だった? そしてクローンと化した元祖。

たらはかに様のお題に参加しています。


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