「フシギドライバー」①
カオリは免許を持っていない。もともと車がなくても困らない土地で育った。車酔いしやすい体質で車のニオイさえ苦手だった。結局免許をとる機会に恵まれなかった。
だが免許がないとは道路交通法にも不案内ということだ。履歴書の埋め草とか身分証明書に不自由する。人として如何なものか。その引け目のせいだろうか、あるときから毎晩奇妙な夢を見るようになった。当たり前のようにハンドルを握って山道を走っている。どこまで行っても標識がない。こんなところ車でないと来れないわねとつぶやく。すると翌朝ニュースで事故の映像が流れるのだ。「〇〇県△△郡の山間部で、」ドライブレコーダーの対向車が大きく迫ってくる映像。昨日の夢と同じだ。
「もしかしてアタシ、ドライバーさんに乗り移ってたりして」
そっちも無免許だ。
そしてニュースをPCに取り込みシートを模した椅子に腰かけベルトを締める。VRを被ってゲームを開始する。カーアクション映画を体験するために。
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