忘年怪異 ③
またしても忘年会に出席している夢を見ているのか俺は? こんな顔ぶれが揃うはずはないのに。
「忘年会ですって? よくも忘れられるわね、ひどい人」
ごめん。わかってるよ。だからこうして夢で会っているじゃないか。そうだ一度挨拶に行くからね、君たちの遺族に。ここを出ることさえできたらなあ。
テーブルに私の座る席はないようだ。和気藹々とグラスを傾け上機嫌な彼女たち。大皿料理は残りわずかだ。会費は先払いしたのに。この日この時間を楽しみにしていたのに。フォークとナイフに手が伸びる。
「あら。遅かっ、ええっ?」(キャア〜!)
時間を間違えていた。1時じゃなく11時だったのだ。
顔ぶれは最初の妻A子、ホームにいるはずの母親のB子、出戻りの妹のC子、現在一緒に暮らしているD子だ。彼女らが互いにちゃんづけだとは意外だ。どんな顔でこの場を過ごせばいいのかわからない。自分のグラスがない。誰も俺と目を合わせようとしない。おい待てよ、生命保険証券って何の話ですか?
140×3
それぞれ別の話です。ヘッダーの絵を元に作りました。
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