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ただ歩く 未来の断捨離編

 ただ歩く。
メッセージが届いた。多田が歩いたというのだ。彼は小学校の同級生で大して親しくはなかったけれどある事情でボクは彼の動向を見守っていた。
 多田が引きこもりになった話から始めよう。折しも断捨離ブーム最盛期に多田の母親が息子のお気に入りのシューズを勝手に捨てた。スポーツ選手のサイン入りだったとも、意中の彼女を含むグループで行ったテーマパークでたまたま二人きりで乗り合わせたアトラクションで履いていた物とも言われる。以来彼は歩くことを拒んだ。もうサイズが合わないじゃない? と母親は取り合わなかった。
 机の上には新聞の投書の切り抜きがあったという(ヘッダー参照)アンチ断捨離派によってネットを賑わせ忘れた頃にまた盛り返す「断捨離のせいで命が失われた」のエピソードだ。あれを彼に送ったのはクラスの誰かだ。多田引きこもるの噂を耳にしてもしや自分たちがふざけて隠した上履きがフラッシュバックしたせい、背後にあのイジメがあるという声が上がったのだ。でも直接の引き金は断捨離だろう? 論争が起きた。
 ともかくあのときのことはキチンと謝罪しなければ。ボクらの未来のためにも。ごめん。それだけを告げにただ歩く。

500文字

たらはかに様のお題と小牧幸助様のお題に参加しています。

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