道中記 サイゼリヤ編
「思ったより安かったね」
スーツケースを転がしながら話す。
「それに早かった」
弥次喜多はイタリア旅行を計画したのだった。
「ここがローマか。休日にピッタリだ」
「腹が減った。あの店にいくか」一人が手近なレストランを指差す。
「えーと、sai、は君は知っている、you knowだな、zeriはゼロの複数かな? yは外来語に使われるけど普通は-iaで、英語の-yのように語尾につけて他品詞にしてるのだろう。のような、っぽい、の意味だね」
ふと頭に災とか債とかのネガティブな語が無に帰するイメージが広がる。いやいや、ここはイタリアだもんな?
「ゼロはポジティブな言葉だ。値段とかカロリーとかノンアルとか」
若い女性の群れが彼らを追い越し店に入る。
「ノンアルはともかく無料やカロリーゼロはあり得ないだろう?」
「まあ、そうだけど目指していますよって意味じゃないのかな?」
それにしても、これから飛行機に乗るのだということを忘れていたのだった。
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サイゼリヤの店名の由来は諸説あるようです。