サインはさしすせそ、あるいは赤点山登り
数学が苦手だ。二番目に。一番は? 山道だろうか。山の登口には「そ」という札がある。ここはそ点だ。ちなみに俺の粗点は赤点だった。しばらく行くと「やあ、ボクがガイドします」賢そうな子どもが現れた。1キロごとに札があるという。これは良い接点か? 「せ」点での油断がたたったのか、「す」点でステンと転んだ。だんだん高度が上がってきて視点が開けた。「ほら気をつけないと失点しますよ」ええい、うるサインだよ。俺が一番苦手なのは生意気なガキだ。「あっ、問題がありますよ。この山道の平均傾斜角度を求めよ。山の高さは2000メートルとする」ひえー勘弁してよ。いや簡単だわ。歩いた距離が5キロ高さが2キロで、」「惜しい、いや惜しくない。さ、し、す、せ、そ、の5地点の間は4つあってそこが1キロだから、距離は4キロです」やれやれ。「2/4=0.5 はサイン30度ですよ」たどり着いた頂上「さ」点から遠くに臨む海はサテンの輝きを放っていた。