忍者ラブレター ②-2 #毎週ショートショートnote
「やったよ。ついに俺が忍者国宝に決まった」夫が嬉しそうに電話をかけてきた。長い海外勤務の末にようやく帰国を果たす。ここに至るまでの苦難にみちた道のりは一言で言い尽くせない。この国に幾度もの政変がありその度にわが家に危機が訪れたことから始めなくては。彼のハイスクールの同級生には大統領の甥に当たるあの男がいた。『恋文を書いてみよう』という課題で夫の作品が私の心を射止めた。周囲の反応は冷ややかで「草の者の分際で」との囁きが飛びかったけど私たちは耐えた。その後の成り行きも自分のせいとは考えたくなかった。
「あいつはとうとうトップになれなかった。文部科学大臣とやらを最後に健康上の理由で引退するって話だが事実上失脚したのさ。『ラブレター』のつもりで忍者国宝の推薦状を出したと言ってくれたんだ」
これで良かった。一件落着ね。あとはこの体制がもうしばらく続いてくれて馬鹿息子さえ目を覚ましてくれれば。私は男に飲ませる薬を準備した。
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忍者ラブレター②の別の視点です。
たらはかに様のお題に参加しています。
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