忘年怪異 ②
忘年会は貸切車両で行われることが決まった。悲惨な事件があったばかりだが、仏滅割引に異論は出なかった。新入社員、中途採用者、インターンから職場見学の小学生に至るまで参加する。幹事は新人の源頼光とその手下が指名された。嫌な予感が胸に広がる。こう見えて俺は米どころ育ちで酒には少しばかりうるさい。ビールやサワーを飲むくらいなら潔くジュースにするしカタカナ横文字酒は場違いで罰当たりと心得ている。どんな酒を手配するのか見ものだ。おかしなものを出したら即座に身体的精神的攻撃を加えて過大過小な要求をし人間関係を切り離してやるまでだ。
披露宴にありがちな酒樽だ。『鬼ころシ』とある。赤い腹かけに今年の漢字をあしらって黒い獣を連れた子どもが勝手に樽を開封しようとしている。
「君には早いよ」と幹事。小学生か。ついでに車内へのペット連れ込み武器持ち込みも禁止だぞ。
忘年会が始まった。俺の前には樽酒が、他の参加者の手には烏龍茶があった。
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「また貸切車両で事件が起きた模様です。一気飲みで人が倒れたという通報があり現場に救急隊が駆けつけたところ、人か何かと見られる腕が一本だけ残っていました」
①の続き、アルハラ編です。
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