強すぎる数え歌 ①
🎵ひとり、ふたり、さんにんいるよ。よにん、ごにん、ろくにんいるよ、
あの歌が聴こえてきた。なぜか息苦しくなる。幼いころの記憶は飛んでいる。楽しかったことしか覚えていない。公園でボールを追いかけている自分。「上手よ!」母の明るい声が響く。そのあとで何かが起きたのだ。
「忘れたとは言わせないよ?」ある日姿を現した男が凄む。「早く返せ」
「どうしてなの?」母の強すぎる金切り声。「あんなに頑張って練習したのに!」ぼくは状況が飲み込めないままだった。
「それなのにどうしてお前が10番目なのよ⁉︎」母は泣いていた。翌日から不思議なことが起きた。クラスの友だちが一人また一人と欠席するようになったのだ。それも男子ばかり。それもチームの子ばかり。やがて母がコーチに呼びだされた。
「残念です。お宅の坊ちゃんにはキーパーを任せるつもりでしたが、他のお子さんたちが急に都合がつかなくなってしまい試合にならないのです」
思い出したよ、9人の居場所。
410文字
たらはかに様のお題に参加しています。
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