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「消しゴム顔」②

 今だから話すけど、君が風紀委員のフー子と呼ばれて美術部で版画制作をしていた頃の話さ。
 ボクはむしゃくしゃした気持ちで購買部の消しゴムのコーナーにいた。不良のタケシにからかわれた言葉が頭の中をグルグルまわっていた。
「お前の顔、まるで消しゴムだな。真っ白でさ」
ボクはかっとなって
「消しゴムなんかじゃない、馬鹿にするな」
と叫んだ。
 購買部の消しゴムは画一的な白で一個くらいなくなってもわからなそうだ。魔が刺してひとつ摘んでポケットに入れてみた。その瞬間腕を強く掴まれた。水泳部顧問の先生じゃないか、万事休す。でも最終的に先生は見逃してくれて、ボクの顔からモヤモヤは消えたよ。まるで消しゴムをかけたように。青春の1ページだね。

 そんなことがあったのね。
(あの頃のあなたは校内一の美少年で消しゴムに彫った顔は高値で取引された。ライバルも多かった。特にあの水泳部顧問。ちなみに私がフー子と呼ばれたのは風紀委員だからじゃないのよ)

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