秋の空時計 #毎週ショートショートnote #シロクマ文芸部
「走らないで痩せるランニングサークル」そんなチラシが目を射た。もう騙されない。こっちには秘密兵器がある。その名も秋の空時計。綺麗な空色のブレスレットだが時間のほか体温・心拍数・歩数も計ってくれるのだ。でも最近は時間さえ見ていなかった。電池交換も忘れていた。
「もしもし先ほどそちらでボタン電池買ったはずなんですが」「そうですか届いていませんか」痩せさせまいとする謎の力が働いているようだ。
ある日突然腕時計が消えていたのです。何かの呪いでしょうか? 占い師は空色の拡大鏡をこちらに向けた。
「タンスの引き出しの箱の中です。歩数を数えられるのが面倒で自分で片づけましたね。空解けです。電池もあったのでしょう?」
やばい、見抜かれている。
「はい、冷凍秋茄子の袋に張りついていました」
冷えこみは秋の深まりのせいだけだろうか。飽きが戻って再び健康だのダイエットだの言い出すまで冬眠だ。占い師は肩をすくめ時計の姿に還り引き出しに戻る。
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