ごはん杖 ①

「何度言ったらわかるの、食事中に頬杖をつかないで。ほらほらご飯がポロポロこぼれているじゃないの。ママはね、お前に国一番のレディに育って欲しいのよ」母の言葉を無視するようにあの子はわざとお行儀悪く振る舞う。おかずを手づかみにする実子を継母は愛おしげに見つめている。
 その夜魔法使いが現れた。
「まるで人生の不満を一身に背負ったような顔をしているね?」私は一気にまくしたてた。
「実の子ばかり贔屓して継子の私には酷いんです。ごはんの中味も差別されてるし食卓も別。一度でいいから私だって頬杖くらいついてみたい。お行儀が悪いと叱られたって構わないから」
魔法使いは杖を一振りした。テーブルが現れた。更に一度杖を振った。何かが変わった。ああこれでご飯のときに頬杖がつける! 

 しばらくするとお行儀の悪い実子がやってきた。
「ママ、大変よ。見たこともない女の子がわがもの顔で新しいテーブルに座ってるの。その上ハティまでいなくなっちゃった!」

410文字

その後私は、こき使われた。
招待状が届くまで。
あのまま犬だったら?
ごはんをさがして
ボウに当たっていたかも知れない。


たらはかに様のお題に参加しています。

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