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ときめきビザ ②

「そうよアタシは海ヘビ座の女。懐かしい歌のフレーズでしょ」
「懐かしいとは記憶にあるものに対しての心情だ。なければただの古い歌。覚えてなんかいないよ。モノマネでさえもね」
 彼はいつも遠くを見ていた。結局アタシは彼のことなんか何もわかっていなかった。海の向こうから来てまた遠くの島に流れて行った以外は。アタシもせめて海へ行こう。ビザを取って彼を追いかけよう。
 アタシの遠流が決まったよ。時を越えた島流しだ。過去には行けない未来にしか。気がつくべきだった彼が過去から来ていたこと。
 その昔、きらめき・ざわめき・どよめき・ひしめき・よろめき、そして彼ときめきは六ツ子だった。単に名前を気に入られて執権様の養子になった。家系図に北条時目気の名は残っていない。それもそのはず神風に飛ばされてここまで来ていた。
 でも口の悪いやつに言わせるとそんなの全然珍しくないって。要するに来年のヘビ年。三ヶ月後の遠い未来で待っていてね、トキメキ。


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たらはかに様のお題に参加しています。

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