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大増殖天使のキス テレフォンショッピング編

「アレだよアレアレ」
「なんですねおじいさんたら、ちゃんと名前を言ってくださいな」(物忘れがひどいわこの人)

 じいさんは呆けてなどいなかった。妻が川で洗濯している隙に通販会社に電話をしている。
「アレをください」
アレとはレア物の隠語だ。お目当ては若い頃一度だけ手にした天女の羽衣。カタログには希少価値の文字とともに天の使いの接吻特別サービスとある。使用済み衣だけでなくそこまで? 天にも昇る心地だ。量産した粗悪品にシワシミ加工とは知るよしもない。

 一方洗濯に行くと家を出たばあさんは歩きスマホで話題のサイトを開いていた。簡単登録でおこづかい稼ぎというやつだ。オーディションカメラを開くと画面に自分の顔が映る。瞬時に修正されて若返っていた。
『ちょっと投げキスしてみて』
「こうですか?💋」
画面が👄でおおわれる。

 やがて家に安物の布はしが届き、じいさんは🫦でいっぱいのメールを受け取った。

 天上で老天女の電卓操作音がプチュと鳴る。

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たらはかに様のお題に参加しています。

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