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私の日 古代編

 私の日本語能力検定試験の結果は最悪で、スピーキングライティングリスニング共にDランクであった。どうしよう困った。こんなことでは就労ビザが取れない。
「大丈夫だよ英語教師になればいい」って? 黙って金髪のカツラをつけて青いカラコンを装着してペーパーテストの解答集を見ながら〇と×をつけるだけなら簡単誰にでもできた。私の日本人性は疑われたけれど。その上ある日私の日輪がみるみる欠けるという事態が発生した。私の日蝕がダイヤモンドリングを象って天にその姿を現した。
「私の日巫女よ、そろそろ潮時だ」
彼は小さな箱に先ほどのリングを収めて記念すべき私の日を演出した。私の日々を後継者に譲渡してその地位を退いた。偶然擬似に受けたインタビューは惨憺たる内容だったけど、日本語でも英語でもない言葉で記され後世に伝わったという。私の日本での生活は幸福そのもので、たくさんの子孫に恵まれたのだ。もう私の日々は忘れられて私の日没を迎えたのだけど。

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