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理科室まがった ②

 『理科室階』で金属の扉が左右に開く。白衣の男が立っていた。担任教師だ。背後の棚にはフラスコやビーカーや試験管、壁際には人体模型がある。
「先生、質問があります。移動している電車のなかでさらに進行方向に向かって歩くとします。それは他の乗客よりも速く目的地に向かっていることになりますか」
「先頭車両から下車したら改札までの距離が遠くなる可能性はあるだろうね」
「つまりある列車に乗ってしまったらもうジタバタしても仕方がないということでしょうか」教師はお前の考えはお見通しだという顔で
「君はせっかく大宮から乗った湘南新宿ラインをみすみす赤羽で下車して埼京線に乗り換えるつもりかね?」
窓の外に桜が見えた。飛鳥山公園だ。この先ただ乗っていれば地球の丸み程度の認識カーブを描いて北区内を大廻りするのだ。板橋区内をほぼ直進する奴らに3分も遅れをとってしまう魔の赤羽池袋間である。ボクの焦りを乗せたまま特別編成理科室仕様車は走り続けた。

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いちおう解説しますとこの主人公は親の勧めてくれたレールに疑問を感じたものの下りることはしなかったようです。

たらはかに様のお題に参加しています。

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