「サラダバス」②
何度も転職を繰り返してきた。もはや年も年だがまだ団体の役員に名を連ね、バリバリの現役だ。今日は骨休めと商品チェックを兼ね系列会社のバスツアーに参加した。全国湯めぐりバスは文字通りバスで名湯から名湯を走る。大きな声では言わないがこの温泉もあの温泉もこの私の尽力があって開発されたようなものだ。
バスの奥の席に一人の男性客がいた。
「久しぶりだな」と声をかけてきた。
「おお、これは」
相手ははるか昔に身を置いていた会社の上司、それも若社長だった。
「その節はどうも」、言いかけて言葉が止まる。青ざめた顔色と薄らいだ足元。そうだった。
「あんたの活躍ぶりは聞いている」
「恐れ入ります」
「思えばあのとき、あんたの言う通りにしていれば。我が社は今も繁栄していたに違いない」
かも知れませんな、勝頼様。
「本日はどうか当社のバス並びに温泉をお楽しみください」
私はツアーのパンフレットとサラダバス専務サラダ昌幸と記した名刺を手渡す。
405文字
たらはかに様の企画に参加しています。
サラダ太平記、読みかけましたが全12巻にして味付けは大人向けオジサン向け⁉️ 1巻の初めの武田氏が滅びたあたりで書きました😅 続きが気になりますが他のことができなくなりそうです。