心お弁当 ATMの休日編
その男はすべてにおいて自分の人生に満足していたといえる。その日はお供を一人だけ連れて趣味の狩猟に出かけようとしていた。空はどこまでも晴れ渡っている。その豊かな森は彼のの領地だった。二度目の政略結婚により広い領土と亡妻よりも若い後妻を手に入れたのだ。そして色白の一人娘は前妻の財産を一人で相続していた。あれを隣国に嫁がせれば角に白を置くようにその周囲は一斉に真っ白く反転することになる。
「陛下、本日のお弁当です」
包みを開いてみれば新妻の手料理の炙り肉だった。一口頬張ると懐かしい味がした。ふうむこれはジビエのハツだな。以前仕留めたことがある彼にはすぐにわかった。
ご夫君である王様がお好きな味を心得ておいでとはお優しいお妃様です。
彼は微笑んだが小さくため息をついた。実は彼の心はすでに飽和状態に達していた。幸福とは頭で考え指折り数えるものではなく心で感じるものだよ。そうだろう? と彼は小屋で若く美しい猟師に話しかける。
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たらはかに様のお題に参加しています。