「タイムスリップコップ」③の宮編
家を飛び出し自転車を漕いだ。ドリンクホルダーにあのコップを付けてひたすら西に向かう。正面から顔を射る午後の日差しが眩しい。ずいぶん遠くまで来た。ここは何処だろう。橋はまだだろうか。
「大丈夫ですか?」
おかっぱの幼女が私をのぞき込んでいる。
「ここどこですか。橋を渡りたいのですが」「橋?」
その言い方は「箸」というときのものだ。
「お腹すいとうね」
幼女はままごとのように木の葉に土を盛り小枝をきれいに並べて
「鯛ご飯と鯛のお造りです。お上がりください」
と差し出す。
「うまそう。鯛は蒸すのもいいよ」
「まあハイカラなことを」
すると兄らしき少年が
「知らん人と口利きな」
と幼女を連れ去った。
その瞬間、大きな吊橋が姿を現した。渡らずそのまま帰路についた。
あの子は曽祖母だ。嫁入り道具に無水鍋があったという。女たちのの料理を巡る諍いに立ぷk、アップアップして家を飛び出した。遠い過去へ旅し長大な橋を目にした今では、コップの中の嵐に思えた。
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