「ジュリエット釣り」砂利ベッド売り編
映画が公開されるや否やさざれ石を褥に日夜列をなして巷のおなごはヂユリエツトスタイルに髪を結って欲しいと髪床に無体な要求をした。だが俄かに雇われた髪結いは忙しすぎて肝心の映画を見ていないばかりか出来ぬとも言えずせいぜい街中に貼られたポスタアを眺めて推測するよりなかった。
「兄貴、手前の横顔の女性がヂユリエツトですか」
「そのようだ。金髪だが黒いタアバンを巻いている。要するに満洲族の男のごとき髪かたちだ。三つ編みを上から垂らして男をベランダに釣り上げたのであろう」
肩にかかった赤い襷はサスペンダアと呼ばれるようだ。用途はやはりスカアトを吊るために相違ない。
「じゃリベット打っちゃう?」
「あちこちにピアスもサアビスしちゃお」
かなりパンクなジュリエットだ。実はかれらも新しい物は好きであった。米ソは宇宙に飛び、プラハに春、ケネディは撃たれ、3億円が強奪されていたがうら若き乙女たちは一途な恋に夢を見ていたがそんなじゃ離別道理。
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1968年のポスターをイメージしました。かなりイタリアンなスタッフです。オリビア・ハッセーの横顔はボッティチェルリの絵のようです。
たらはかに様の企画のお題と裏お題に参加しています。